もう一つの『ごんぎつね』

3月3日の桃の節句、お話し会のメンバー4人で名進研小学校の岩下修先生を尋ねました。岩下先生は国語の先生で、教師として子供たちへ授業をしながら、各地の小中学校、研修会などで模擬授業、講話などを行っていらっしゃる方です。

 

新見南吉の『ごんぎつね』、日本人であれば誰もが一度は読んだことのなるお話ですよね。現在は小学校4年生の国語の教科書にのっていて、音と絵本のお話し会でも人気演目の一つです。先月小学校でこの『ごんぎつね』を公演した際、「どうせならば岩下先生の『ごんぎつね』を朗読すればいいのに」というご指摘がありました。私たちは本に書いてある通りにそのまま読むということを基本としています。『ごんぎつね』も教科書にある通りに読んでいました。ところが、岩下先生にお会いして、大きな発見がありました。

実は教科書の『ごんぎつね』は南吉が書いたオリジナルでなく、1932年に「赤い鳥」に掲載された際に添削が入ったものであるらしいのです。南吉の『ごんぎつね』の研究をされ、オリジナル版をまとめられたのが岩下先生です。では、教科書のものにはどのような添削が入っているのか?岩下先生は特に大切な違いを10点挙げて、説明して下さいました。私が一番興味深く感じたのは、さいごにごんが兵十に撃たれたあとの描写です。教科書には「ごんは、ぐったり目をつぶったまま、うなずきました。」とあります。南吉オリジナルは「ごんは、ぐったりなったまま、うれしくなりました。」です。エンディングの心情が全く変わってくるではありませんか!

南吉オリジナル『ごんぎつね』を手に入れた私たち、これからじっくりと読み込む予定です。来年度は希望があれば、教科書のものでなく、こちらを公演することも可能かしら?夢は膨らみます。

 

岩下先生、どうもありがとうございました。